朝起きてすぐに出かけなくちゃいけないのに、iPhoneのバッテリー残量が少ないことに気がついた──なんてことはよくありますよね。そんなときに便利なのが「急速充電」です。
急速充電を活用すれば、iPhone 17シリーズの場合、最短20分で50%充電可能です。支度をする短時間でバッテリー残量を回復させることができます。
iPhoneを便利に使う上で、急速充電はもはや活用必須。この記事では、急速充電とは何か、必要なワット数はどれくらいかなど、iPhoneユーザーならぜひ知っておきたい急速充電について解説します。
iPhoneの急速充電とは?
iPhoneの急速充電(高速充電)の正体は、「USB Power Delivery(USB PD)」です。
USB PDは急速充電規格のひとつで、今もっともメジャーで幅広いデバイスに対応する規格。iPhoneをはじめiPadやMacBookも対応しますし、AndroidスマホやWindowsノートPCの多くがUSB PDに対応します。

必要なときに高速に充電できることが、急速充電のいちばんのメリットです。特に「iPhoneの充電が遅い」と感じているなら、この機会に充電環境を整えてみましょう。
急速充電に必要なもの
iPhoneを急速充電するには、
- USB PDに対応するUSB-C充電器
- USB-C to CケーブルまたはUSB-C to Lightningケーブル
この2つが必要です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. USB PD対応のUSB-C充電器
まず必要なのは、USB PDに対応するUSB-C充電器です。iPhone 12シリーズ以降は充電器が付属しないため、持っていなければ自身で用意する必要があります。

USB PDでは、USB-Aではなく「USB-C(USB Type-C)」を使います。USB-Cは裏表を気にせず挿せるのに加えて、USB-Aよりも大きな電力を扱えます。
USB-C充電器は純正にこだわる必要はなく、サードパーティ製充電器を使用できます。Appleも「USB PDに対応する他社製USB-C電源アダプタでOK」と案内しています。
純正とサードパーティ製のどちらを選ぶべきかは「iPhoneの充電器は純正のほうがいい?」でもご紹介します。
2. USB-Cケーブル(USB-C /Lightning)
USB-Cケーブルは機種のコネクタの形状で選ぶものが変わってきます。
- iPhone 15シリーズ以降 → USB-C to Cケーブル
- iPhone 14シリーズ以前 → USB-C to Lightningケーブル
USB-C to Cケーブルは、基本的に両端がUSB-Cであればどのようなケーブルも急速充電に使用できます(規格に準拠しているものであれば)。
一方で、LightningはApple独自のコネクタです。そのため、USB-C to Lightningケーブルは純正またはMFi(Made for iPhone)認証のある製品を選ぶのが安心です。
急速充電に必要なワット数は?
基本的には「20W以上のUSB-C充電器」を使用すれば十分な速度でiPhoneを充電できます。ただし、最速で充電したい場合は、30W以上や40W以上の出力が必要です。
機種によって事情が異なるので、分けて解説していきましょう。
iPhone 17シリーズ
iPhone 17シリーズの場合、「40W以上のUSB-C充電器」を用意しましょう。20分で最大50%の非常に高速な充電が可能です。

45W出力に対応するUSB-C充電器「Anker Nano Charger (45W)」でiPhone 17を充電してみると、20分で9% → 58%、たった20分で49%もバッテリー残量が増加しました。
最速で充電したい方は40W以上ですが、実測ワット数は30W前後となります。


30W充電時と比べて大きな差があるわけではないため、最速にこだわらないなら30W以上でOKでしょう。
iPhone Air/12〜16シリーズ/SE(第3世代)
iPhone AirやiPhone 16シリーズ以前、iPhone SE(第3世代)は、「20W以上のUSB-C充電器」を使用すれば30分で最大50%の急速充電が可能です。
iPhone 16 Proを「Apple 20W USB-C電源アダプタ」で充電してみると、30分の充電で11% → 63%、30分で52%アップしました。

iPhone 16 Proで確認する限りでは、30Wや40Wのより大きい出力に対応する充電器を使用しても、実測では17〜20Wでの充電となっていました(瞬間的に20Wを超えることはある)。つまり、20W出力対応のUSB-C充電器で十分高速に充電可能です。
iPhone 8〜11シリーズ/X/XS/XR/SE(第2世代)
iPhone 8〜11シリーズやiPhone X、iPhone XS、iPhone XR、iPhone SE(第2世代)は、「18W以上のUSB-C充電器」を使用することで30分で最大50%充電できます。
これらの機種が発売された当時は、充電器として「Apple 5W USB電源アダプタ」が付属していました(11 Pro/Pro Maxは18W USB-C電源アダプタが付属)。これはUSB-A充電器で急速充電には対応していません。
もしかすると「昔にiPhoneに付属していた充電器を今でも使ってるよ」という方もいるかもしれません。そんな方は、18W以上のUSB-C充電器に切り替えれば劇的に充電速度が向上します。

ちなみに、以下は「Apple 5W USB電源アダプタ」と「Apple 20W USB-C電源アダプタ」の充電速度比較です。それぞれでiPhone 12 Pro Maxを充電しました。
| 充電器 | 充電開始時 | 30分経過後 | 増加 |
|---|---|---|---|
| Apple 5W USB電源アダプタ | 2% | 17% | 15%アップ |
| Apple 20W USB-C電源アダプタ | 2% | 53% | 51%アップ |
高出力の充電器を使用しても大丈夫?
急速充電の条件として「40W以上/30W以上/20W以上/18W以上のUSB-C充電器」を挙げていますが、条件に合うものなら100W以上や140W以上のUSB-C充電器を使用してもまったく問題ありません。
USB PDによる急速充電には、充電するデバイス側が必要な分の電力だけを要求する仕組みがあります。100Wや140Wのような高出力の充電器を使用しても、過充電や安全性の心配はありません。
私はiPhoneだけでなくiPadやMacBook Proの充電もカバーできる「Anker Prime Charger (160W, 3 Ports)」をよく持ち歩いています。

単ポート140W出力、合計160W出力に対応する高出力充電器ですが、問題なく安全にiPhoneを充電できます。たとえば「iPhoneとMacBookの充電を兼ねたい」という場合は、より高出力の充電器を用意しておくと便利です。
ワイヤレスの急速充電について
充電速度だけで言えば有線がベストですが、利便性の面ではくっつけるだけ・置くだけで充電できるワイヤレスのほうが上です。
ワイヤレス充電も条件によって充電速度が異なります。
機種別・規格別の最大ワット数
機種別・ワイヤレス充電規格別に充電時の最大ワット数をまとめました。
| 機種 | MagSafe/ Qi2 25W | MagSafe/ Qi2 15W | Qi |
|---|---|---|---|
| iPhone 16〜17 | 最大25W (30分で50%) | 最大15W | 最大7.5W |
| iPhone Air | 最大20W (30分で50%) | 最大15W | 最大7.5W |
| iPhone 12〜15 | 最大15W | 最大15W | 最大7.5W |
| iPhone 8以降 iPhone 16e iPhone SE(第2世代以降) | 最大7.5W (マグネット非対応) | 最大7.5W (マグネット非対応) | 最大7.5W |
iPhone 17/iPhone 16シリーズ(16eを除く)の場合、「Apple MagSafe充電器」または「Qi2 25W対応のサードパーティ製ワイヤレス充電器」を使うことで、最大25Wの高速なワイヤレス充電が可能です。

MagSafeはApple独自のシステムなのに対して、Qi2/Qiはそうではない標準規格です。様々なメーカーからQi2/Qiワイヤレス充電器が販売されています。


選択肢の多さや価格、充電性能を踏まえると、おすすめは断然Qi2/Qiワイヤレス充電器です。
最大25Wに対応するのは、「Qi2 25W(Qi2.2)」となります。製品によっては最大15Wとなるので、混同しないように注意してください。
ワイヤレス充電の詳しい使い方や活用方法は「iPhoneのMagSafeとは?」でも解説しています。
組み合わせて使用する充電器の出力に注意
また、ワイヤレス充電器と組み合わせて使用するUSB-C充電器の出力にも注意が必要です。
Apple MagSafe充電器の場合、
30W USB-C電源アダプタ(別売り)と組み合わせると、対応するiPhone 16モデル、iPhone 17モデル、iPhone Airを約30分で50%まで充電でき、最大25Wの一段と高速なワイヤレス充電ができます。
20W USB-C電源アダプタ(別売り)と組み合わせると、MagSafe対応のiPhone 12以降のモデルで最大15Wの高速ワイヤレス充電ができます。
このように30Wか20Wかで充電速度が変わります。
USB-C充電器に求められる出力はワイヤレス充電器によって異なりますが、だいたいは30W以上か40W以上です。せっかくQi2 25Wに対応するワイヤレス充電器を用意しても、使用するUSB-C充電器の出力が低いと充電速度が上がりません。
充電が遅いときの確認ポイント
iPhoneの充電が遅い原因になり得ることをまとめておきます。
有線充電の場合
- 充電器がUSB PD非対応/USB-A充電器を使用している
- ゲーム等の負荷がかかっている状態で充電している
- iPhoneまたは充電器が熱い/冷えすぎ
- 十分なバッテリー残量がある(80%以上はトリクル充電に切り替わる)
ワイヤレス充電の場合
- 位置ズレやケースの厚み、金属リング等の干渉(位置ズレは発熱の原因にもなりやすい)
- ワイヤレス充電器がQi2非対応(Qiは最大7.5Wと遅い)
- 組み合わせて使用する充電器の出力不足
- 発熱などによる制御がかかっている
- 最新のiOSバージョンにアップデートされていない(iPhone 16シリーズはiOS 26でQi2 25W対応、ただし16eは非対応)
よくある質問
- 途中で充電速度が落ちるのはなぜ?
-
iPhoneのバッテリー残量が80%を超えると、バッテリーの耐用年数を延ばすためにトリクル充電に切り替わります。80%あたりから充電速度が落ちるのはこのためです。
出典:apple また、iPhoneや充電器の発熱により出力制御がかかり充電速度が落ちることもあります。充電速度が落ちたと感じたときは、iPhoneのバッテリー残量と発熱具合をチェックしてみてください。
バッテリー – なぜリチウムイオンなのか?Appleのリチャージャブルリチウムイオンバッテリーの技術は、あなたのiPhone、iPad、iPod、Apple Watch、MacBookに最良のパフォーマンスをもたらしま…Apple(日本) - iPadやMac付属の充電器でiPhoneを充電してもいい?
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OKです。iPadやMacに付属する充電器も「USB PD対応のUSB-C充電器」です。iPhoneやその他のデバイスの急速充電に使用できます。Appleも「iPadやMac用のUSB電源アダプタでiPhoneを充電できる」と案内しています。
- 急速充電はバッテリーの劣化を早める?
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バッテリーの劣化を早める原因になるのは、急速充電そのものではなく「発熱」です。急速充電中はどうしても発熱しやすいため、特に「充電しながらゲームアプリで遊ぶ」といった負荷のかかる使い方をするとバッテリー劣化に繋がる可能性があります。
とはいえ、私は過度に気にする必要はないと思っています。バッテリー劣化を心配して急速充電を控えるよりも、日常的に活用して「急速充電の便利さ」を享受したほうがいい、という考えです。
それにiPhoneにはバッテリー劣化を軽減する管理システムが備わっていますし、劣化すれば新品バッテリーに交換することもできます。極端な温度環境で充電しない、充電しながら負荷のかかるアプリを使わない程度の対策でいいでしょう。
- バッテリーを長持ちさせるには?
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iPhone 15シリーズ以降では、80%から100%まで5%刻みで「充電上限」を設定できるようになりました。
充電上限の設定でバッテリー劣化を軽減 充電上限を設定しておくと、文字どおりバッテリー残量が設定値に達したところで充電を停止してくれます。リチウムイオンバッテリーは、フル充電や残量ゼロの状態で放置すると劣化しやすいと言われます。
充電上限80%で約1年使用したiPhone 16 Proのバッテリー最大容量 iPhone 16 Proの充電上限を80%に設定して使った結果、約1年の使用でバッテリー最大容量は98%と新品に近いレベルが維持されていました。充電上限の設定は体感的にも非常に有効です。
iPhone 14シリーズ以前の機種は、「バッテリー充電の最適化」をオンにしておきましょう。これは使用者の充電パターンを学習し、自動的に充電をストップするなどでバッテリー劣化を軽減してくれる機能です。デフォルトでオンになっているかと思いますが、改めて設定を確認しオンにしておきましょう。


