OpenAIが日本時間8月21日、Mac版ChatGPTアプリで「Apple Messages」プラグインの提供を開始しました。Appleの「メッセージ」アプリと連携し、iMessage・SMS・RCSの会話の読み取りや検索から、返信の作成・送信までをChatGPTに任せられるようになります。
OpenAIが例として挙げているのは、「カレンダーを確認して、来週の夕食で空いている時間を◯◯に返信して」といった頼み方。会話を読んで整理するだけでなく、送信までできるようになりました。
対象はApple silicon搭載Macのデスクトップアプリで、どのプランでも使えます。ただし、動くのはAIに作業を任せる「ChatGPT Work」と「Codex」の2つのモードの中だけで、普段のチャット画面やiPhone版・Web版は対象外です。
ChatGPTに何を許可することになるのか
追加は、アプリの「プラグイン」一覧で「messages」を検索してインストールするだけです。導入時に何を許可するのかについて、OpenAIは「求められるmacOS側の権限を許可する」としか説明していません。
実際に導入を進めると、求められた権限は3つでした。送信に使うオートメーション、名前から相手を探すための連絡先、そして頼まれたときにメッセージを検索するためのフルディスクアクセスで、それぞれの用途は許可画面に書かれています。

このうちフルディスクアクセスは、メッセージに限らずMacの中のファイル全般を読める強い権限です。
試しに「最近の会話について教えて」と頼むと、直近のやり取りを新しい順に要約して返してきました。届いていた認証コードを「安全のため省略します」と自分から伏せる動きも見られました。

一方で、送信が勝手に行われることはありません。初期設定では、ChatGPTが作った本文と宛先を自分で確かめて承認しない限り送信されない仕組みです。
承認は「今回だけ」のほかに、会話ごとの「常に許可」も選べます。ただ「常に許可」のほうは、OpenAI自身が「自分の名前で送られるメッセージを送信前に確かめる最後の機会がなくなる」として、リスクを受け入れられる場合に限るよう注意しています。
なお「常に許可」は、設定の「コンピューターの使用」にある「メッセージ」の管理画面からいつでも解除できます。同じ場所のスイッチで、メッセージ連携そのものをオフにすることもできます。

また、ChatGPTの作業を承認なしで進める設定にしていると、送信前の確認画面が出せず、メッセージを送れないことがあります。OpenAIはこれを既知の不具合として案内していて、承認を求める設定に切り替えるよう促しています。
読み取ったメッセージがどう扱われるのかについて、OpenAIの説明は多くありません。米Bloombergの取材には「利用にはユーザーの同意が必要」「メッセージ全体のインデックスは作らない」「プラグインはMac上でローカルに動く」と答えていますが、ChatGPT側に読み込んだ内容がサーバーへ送られるのかどうかには触れていません。
モデルの学習への利用は、アカウント側の設定でオフにできます。ただしこれは学習に限った設定で、読み込んだ内容がどこまで送られるのかという話とは別です。
Siri AIより先に現れた「メッセージを読むAI」
実は、メッセージを読むAIはAppleも準備しています。端末内のメッセージなどを横断して扱えるアシスタント強化「Siri AI」が、macOS 27を含む今年のOSで予定されています。
提供は年内に英語から始まる予定で、日本語対応の時期は発表されていません。Siri AIで何ができるようになるかは、iOS 27の新機能まとめでチェックしてみてください。
Bloombergは今回の連携を、Siri AIの強みになるはずだった領域に食い込みかねない動きだと位置づけています。両社はすでに7月10日から、営業秘密をめぐる訴訟も抱えており、OpenAI側は争う姿勢です。
この記事を書いたMark Gurman氏はXで「Appleはおそらくこれをプライバシーの侵害と考えている。介入はあるだろうか」と投げかけました。
それでも先にできてしまったのには、仕組みの側に理由があります。報道によると、この連携はAppleが用意した公式の窓口ではなく、AppleScriptやアクセシビリティといったMacに以前からある自動化の仕組みで動いています。
Mac版ChatGPTはこれまでも、2024年に加わった「Work with Apps」機能でメモや開発ツールの内容を読めました。今回は対象が私的なやり取りに変わり、できることも送信まで広がりました。
iPhoneやiPadで使えないのも同じ事情です。他社アプリがメッセージの会話を読み取る公式な仕組みを、AppleはiOSに用意していません。
Appleが他社のiMessage利用を止めた前例としては、AndroidにiMessageを持ち込んだ「Beeper Mini」を2023年12月に遮断した件があります。ただ、あのときはAppleのサーバーへ外部から接続する手法をふさいだもので、利用者が自分のMacで許可を与える今回とは構造が違い、同じ手は使えなさそうです。
筆者自身、AIにプライベートな情報を渡すことへの抵抗は以前よりも薄れてきました。メールや写真、位置情報、ヘルスケア情報などを含めて、もうかなりAIに見られている実感もあります。そう思いながらも、ChatGPTが読み込んだメッセージがサーバーへ送られるのかどうかが説明されていない点は、利用する上で理解しておきたいところです。
参考:OpenAI・Apple・Bloomberg・X(Mark Gurman)