Appleが現地時間8月20日、レコード会社や配信業者に送ったメールで、AIを使って作ったコンテンツの申告を必須にすると通知しました。メールを確認した複数の海外メディアが報じています。
あわせて、申告された情報をもとにした「Made With AI」ラベルを年内にApple Musicの画面に表示することも、メールで予告されています。予告どおりなら、AIで作られた曲をアプリ上で見分けられるようになります。
ただし、メールが示す時期は「年内」だけで、具体的な開始日はわかっていません。今のところ、日本を含めてユーザーの画面に変化はありません。
AIが「実質的な部分」に使われたコンテンツが対象
レコード会社や配信業者に必須になるのは、「AI透明性タグ(AI Transparency Tags)」の申告です。
メールには、コンテンツの実質的な部分にAIが使われたすべてのケースで、配信データにタグを含めることを求めると書かれています。生成AIサービスを主に使って作られた楽曲も対象に含まれます。
Appleが2026年3月に導入したこのタグは、楽曲・ジャケット・作詞作曲・ミュージックビデオの4種類に分かれています。楽曲のタグは国や地域ごとに分けられず、全地域に共通で適用される仕様です。
現状、申告は任意です。申告されたタグもユーザーからは見えず、配信用の内部データにとどまっています。導入を最初に報じた海外の音楽業界メディアによると、Appleは3月の時点で、将来の必須化をすでに予告していたとのこと。
一方で、今回のメールでは、申告しなかった場合の扱いや、どこまでを「実質的」とするかの基準には触れられていません。4種類のうちどの申告が画面のラベル表示につながるのか、個人で配信するアーティストも義務の対象なのかも不明です。
Appleがレコード会社・配信業者向けに公開している配信仕様も、8月22日時点ではタグを「任意」のままとしています。仕様の上では、申告がなければ「AIを使っていない」ものとして扱われます。
なぜAI利用の申告を義務化するのか
背景には、AIで作られた楽曲の急増があります。Apple Musicを統括するバイスプレジデントのOliver Schusser氏は今年4月、毎月アップロードされる楽曲の3分の1超が「100% AI」だと明かしました。
一方で、そうした楽曲が再生に占める割合はわずか0.5%未満だとも説明しています。大量に流れ込みながら、ほとんど聴かれていません。
フランスの音楽ストリーミングサービスDeezerでは2026年6月のピーク時、完全にAIで作られた楽曲が1日の新規アップロードの50%超、およそ9万曲に達しました。それでも再生に占める割合は1〜3%にとどまっています。
調査会社のイプソスとDeezerが2025年11月、日本を含む8か国で実施した意識調査では、回答者の97%がブラインドテストでAIの楽曲と人間が作った楽曲を聴き分けられませんでした。80%は「完全にAIで作られた曲は明示すべき」と答えています。
Deezerはすでに、自社の検出技術でAI楽曲を見つけてタグを付けています。Spotifyも9月中旬から、AIで作られた架空のアーティストであることを示す「AI Persona」バッジをプロフィールに表示する予定です。
Apple Musicのラベルは、Deezerのような検出ではなく、レコード会社や配信業者の申告に基づきます。Schusser氏はAI楽曲の検出技術を自社で開発しているとも話していますが、この技術でラベルを付けるわけではありません。
そのため、ラベルが付いていない曲が「AIを使っていない」という保証にはならない点に注意が必要です。
ラベルが画面のどこに表示されるのか、日本語でどう表記されるのかは、今後の発表待ちです。ただ、楽曲のタグは全地域に共通で付く仕様のため、ラベルの表示が始まれば、日本でも他の国と同時に見られるようになる可能性があります。
なお、秋のiOS 27では、Apple Musicに歌詞の翻訳機能なども加わる予定です。今年のApple Musicの変化はiOS 27の新機能まとめでも取り上げているので、こちらも参考にしてみてください。
参考:The Hollywood Reporter・Variety・9to5Mac・Music Business Worldwide・Apple・Deezer・Music Ally