Apple初の2nmチップ「M6」と4ダイの「M5 Ultra」、何が変わった?上位チップがM5世代のままの理由

Apple初の2nmチップ「M6」と4ダイの「M5 Ultra」、何が変わった?上位チップがM5世代のままの理由

Appleが8月25日、Mac向けの新しいチップ「M6」と「M5 Ultra」を発表しました。M6は新型Mac miniに、M5 Ultraは新型Mac Studioに搭載され、どちらも9月22日に発売されます。

M6はApple初の2nm(ナノメートル)プロセスで作られたチップです。一方のM5 Ultraは、チップの本体であるダイを4つ、Appleシリコンとして初めて1つのチップにまとめました。ProやMaxの付かない標準のチップ(以下、無印)はM6に進んだのに、最上位はM5の名前のままというラインナップです。

M6は2nmでCPUのコアが3階層に

Apple M6チップ

Appleシリコンの製造プロセスは、M1が5nm、M3が3nm。M4は第2世代、M5は第3世代の3nmだったので、M6の2nmはM3以来3世代ぶりに進んだプロセスです。

CPUは12コアで、内訳はスーパーコア2基、高性能コア4基、高効率コア6基。M5より2コア多い構成。

この「スーパーコア」とは、3月のM5 Pro/M5 Maxの発表でAppleが呼んだ名称です。新しい種類のコアではなく、M5で「高性能コア」と呼ばれていた最速のコアがこの名前になったもので、3月以降はM5搭載製品でもスーパーコアと呼ばれています。

種類として新しいのは、その下に入った中間のコアです。3月のM5 Pro/M5 Maxでスーパーコアの下にもう1段コアが加わり、そちらに「高性能コア」の名前が回ってきました。同じ「高性能コア」でも、3月を境に指す先が一段ずれたことになります。もう1つの高効率コアは、従来からの省電力のコアです。

つまりM5は、スーパーコア最大4基と高効率コア6基の2種類、M5 Pro/M5 Maxは最大でスーパーコア6基と高性能コア12基の2種類で、高効率コアがありません。無印のM5と比べると、M6はスーパーコアが4基から2基に減り、中間の高性能コア4基が加わって、高効率コアは6基のままです。スーパー、高性能、高効率の3種類を1つのチップに全部そろえたのはM6が初めてです。

Appleは、M6のシングルスレッド性能が世界最速だとしています。これは2026年8月に、販売されている競合システムと特定の業界標準ベンチマークで測った結果とのこと。マルチスレッド性能も、Appleの測定ではM5比で最大1.2倍、M1比で最大2.4倍です。

2コア増えたのはGPUも同じで、12コアになりました。各コアにはNeural Acceleratorを備えます。Neural AcceleratorはM5のGPUで導入された、GPUコアの中に置かれたAI演算用の回路で、Metal 4のTensor APIから直接プログラムできます。AI用のピークGPU演算はM5比で30パーセント近く、M1比では8倍以上に増えました。

AI性能でもう1つ大きいのが、Neural Engineのデュアル構成です。16コアのNeural Engineを2基載せ、ピーク演算性能は前世代の最大2倍。システムフレームワークが自動で両方を同時に使います。

メモリ帯域は最大170GB/sに上がりました。M5より10%、M1の2.5倍です。170GB/sになるのは24GBと32GBの構成で、16GB構成は153GB/s。ここはM5と変わりません。最大メモリは32GBで据え置きです。

M5M6
プロセス第3世代3nm2nm
CPU最大10コア(スーパーコア最大4+高効率コア6)12コア(スーパーコア2+高性能コア4+高効率コア6)
GPU10コア12コア
Neural Engine16コア16コア×2
メモリ帯域153GB/s最大170GB/s
最大メモリ32GB32GB

なお、M5比の数字はM6搭載Mac miniの試作機と、M5搭載の14インチMacBook Proを比べたものです。同じ筐体での比較ではありません。

M5 UltraはM5 Maxを2つつないだ4ダイ構成

Ultraチップの核になるUltraFusionは、2022年3月のM1 Ultraで登場した技術です。2つのM1 Maxのダイを10,000を超える信号でつなぎ、ダイ間を2.5TB/sで結びました。M2 UltraもM2 Maxのダイを2つつないだもので、M3 Ultraまで接続は2.5TB/s超のままでした。

M5 Ultraチップ搭載のMac Studio

M5 Ultraが違うのは、つなぐ相手がすでに2ダイであること。M5 Maxは第3世代3nmのダイ2つをFusionアーキテクチャで組み合わせたチップで、M5 UltraはこのデュアルダイのM5 Maxを2つ、UltraFusionで接続しています。2×2で4ダイ。Appleシリコン初のクアッドダイ構成で、ダイ間の帯域も4.4TB/s超に上がりました。

CPUは最大36コアで、スーパーコア12基と高性能コア24基です。M3 Ultraは最大32コアで、高性能コア24基に高効率コア8基を加えた構成でしたが、M5 Ultraのプレスリリースと技術仕様に高効率コアの記載はありません。

コア数がM3 Ultraと同じ最大80のGPUには、各コアにNeural Acceleratorが入りました。Ultra系では初めてです。Neural Engineは32コアを備えます。

メモリの上限は最大512GBでM3 Ultraと変わらず、増えたのは帯域です。819GB/sから1.2TB/sへ、50%高速になりました。

性能はAppleの測定で、M3 Ultra比でシングルスレッドが最大1.25倍、マルチスレッドが最大1.3倍、AI用のピークGPU演算が最大4.5倍、グラフィックスが最大40%高速。メディアエンジンは、H.264とHEVCの専用ハードウェアに、ProResのエンコード/デコードエンジン4基、AV1のデコードを備えます。

M3 UltraM5 Ultra
CPU最大32コア(高性能コア24+高効率コア8)最大36コア(スーパーコア12+高性能コア24)
GPU最大80コア最大80コア(各コアにNeural Accelerator)
Neural Engine32コア32コア
最大メモリ512GB512GB
メモリ帯域819GB/s1.2TB/s
UltraFusion2.5TB/s超4.4TB/s超

Mac Studioには30コアCPU/64コアGPU/256GBメモリの下位構成もあります。512GBを選べるのは36コアCPU/80コアGPU構成だけで、512GBのMac Studioは10月後半に加わります。

上位チップがM5世代のままなのはなぜか

M5 Ultraの比較相手がM3 Ultraなのは、M4 Ultraが出なかったからです。2025年3月にM3 Ultraを発表した際、Appleは「M4 MaxにはUltraFusionコネクタがない」「すべてのチップ世代にUltraが用意されるわけではない」と説明していました。Ultraチップは開発期間がほかのチップより長いとも話しています。

今回も無印はM6に世代が進みましたが、Mac miniの上位はM5 Pro、Mac StudioはM5 MaxとM5 Ultraです。M5 Maxのダイが第3世代3nmなので、それを4つ束ねたM5 Ultraも3nmということになり、同じ日に2nmの無印と3nmの最上位が並びました。

この流れは発表の2か月前から見えていました。6月のBloombergの報道によると、AppleはM6世代ではProとMaxを作らず、開発の中心を2027年前半のM7に移す計画でした。このうち「M6世代はPro/Maxなし」の部分は、今回の発表で確認できました。M7へ移す計画と時期は、まだ報道の段階です。

チップの発表でAppleが示した倍率は、いずれも試作機を使った自社測定の数字で、第三者が検証できるベンチマークはまだありません。実機の評価は9月22日の発売後になります。M6搭載Mac miniの価格と構成はMac miniの記事にまとめています。

参考:Apple

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