Apple Vision Proの現在地。人員削減後、Appleはどうするのか

Apple Vision Proの現在地。人員削減後、Appleはどうするのか

AppleがSiriとVision Proを担当するチームで人員削減を進めていると、Bloombergが8月21日に報じました。削減されるのは合計200を超えるポジションで、うち約100がVision Proを担当するVision Products Group、残りの約100がSiriとソフトウェア側とされています。

同メディアによると、Appleは社員に対し、Vision ProとvisionOSはなくならないが、当面はスマートグラスに集中し、次のVision Proは早くても2028年末の投入を検討していると説明したとのことです。

一方で、人員削減の報道から1週間後の8月28日には、Vision Pro向けにMLBの没入型のライブ配信が始まりました。今回は、8月末の時点でVision Proがどこにいるのか、そしてAppleはこの先Vision Proをどうしようとしているかを整理します。

Vision Pro向けゲームのチームはほぼ閉鎖に

同メディアの報道では、削減の対象になったのはVision Pro向けのゲームを担当するチームと、Appleが自社で没入型ビデオを制作するチームです。ゲームのチームはほぼ閉鎖、没入型ビデオのチームは縮小と伝えられています。

その理由として挙げられているのは採算性です。Appleが作る没入型ビデオは1本の撮影に数百万ドルかかるのに観る人が少なく、採算が合いませんでした。Appleは今後、自社制作を減らしてサードパーティの3Dコンテンツに頼るとのことです。

現行のM5モデルは値上げ、visionOS 27は秋に

現行のVision Pro(M5)の日本価格は、256GBが649,800円、512GBが685,800円、1TBが739,800円(税込)。2025年10月の発売時は599,800円からだったので、開始価格は50,000円上がっています。この値上げは6月にApple全体で行われた価格改定の一部で、MacやiPad、HomePodも同時に改定されました。世界的なメモリなどの部材不足が背景にあると考えられています。米国では同じ改定で3,499ドルから3,699ドルになりました。

まずこの価格がVision Proを選ぶ大きなハードルとなっています。

新機種が出ないハードとは対照的に、visionOSの更新と機能追加は続いています。visionOS 27は開発者向けのベータ7(8月24日配信)が最新で、今年秋に正式版が公開される予定です。見ているものをSiriに質問できるビジュアルインテリジェンス、Safariやフリーボードの曲面ウインドウ、パノラマ写真から空間シーンを生成する機能などが追加され、Siri AIは年内に英語でベータ提供されます。

8月28日にMLBの没入型のライブ配信が始まった

自社制作の没入型ビデオを減らすと伝えられるなかでも、Appleは没入型のライブ配信を続けています。Apple TVで観られる「Friday Night Baseball」は8月28日から、Vision Pro向けにApple Immersiveでライブ配信されるようになり、8K・180度の3Dビデオに、専用の実況とリプレイ、空間に浮かぶスタッツが付き、日本を含む9か国・地域のApple TV契約者が視聴できます。

初回配信のレッドソックス対ヤンキースを観た3人のレビューは、いずれも「体験は素晴らしい、でも製品としては苦しい」という評価。ボトルのラベルが読めるほどの精細さや、4万3,000人の歓声に包まれる没入音声を評価しつつ、3人ともVision Pro自体の厳しさを書き添えています。そのうちの一人、John Gruber氏は、Appleは台数を売れていないし、もっと安く軽く扱いやすい新型が出るまで売れない、と書きました。

Bloomberg記者のMark Gurman氏は、Vision Proを外さずに9イニング座っていられたらワールドシリーズのチケットをタダでもらう資格がある、と冗談にしていました。Vision Proの重さは本体が750〜800g(ライトシーリングとデュアルニットバンドを含み、構成によって変わります)で、353gのバッテリーは別です。

ここまでが現在地です。新機種は出ないまま、整備済製品など安く買える方法も乏しく、一方でOSの更新と没入型のライブ配信は続いている。では、Appleはこの先Vision Proをどうしていくつもりなのでしょうか。

軸足をスマートグラスへシフトか

Bloombergの報道では、当面の軸足はスマートグラスで、Vision Proの次の機種は早くても2028年末の投入を検討している段階とのこと。現行のM5モデルが発売されたのは2025年10月なので、報道どおりなら次の機種まで3年以上空くことになります。

そのスマートグラスについて、Gurman氏は、ディスプレイなしのモデルを2027年のWWDCで発表し、同年末までに発売する計画だと予測しています。同氏は6月にも、軽量なVision Airは2025年10月に中止されたとし、Vision Pro 2はテスト中だが、Vision Proのような製品のカテゴリー全体は凍結されているとの見方を投稿していました。

市場の動きも同じ方向です。IDCが2025年12月に出したプレスリリースでは、2025年第3四半期にヘッドセットとグラスを合わせたXRデバイスのシェアはMetaが75.7%で、Appleは上位5社に入っていません。IDCはこの発表で、市場はかさばるヘッドセットから、より薄く手が届きやすいデザインの機器へ移っている最中だとするコメントを添えています。

Vision Proは消えていくのか

Vision Proの見直しを承認したのは次期CEOのJohn Ternus氏だと、アナリストのMing-Chi Kuo氏は6月に投稿しました。同氏はVision Proの製品ラインをやめるのは正しい判断で、Appleはより大衆市場に届くスマートグラスへ資源を移しているとも書きました。

私には、いまのVision Proは撤退でも継続でもなく、維持モードにあるように見えます。動いているのはvisionOSの更新と、MLBや外部の作り手が中身を供給する没入型配信の枠組みとソフト面が中心。後継機は早くて2028年末のと伝えられてはいるものの、緩やかに存在感は薄れていき、Vision Proではなく、スマートグラスに注目が移っていく、という予想です。

Apple(アップル)

Source:AppleBloombergX(Ming-Chi Kuo)X(Mark Gurman)Daring FireballMacStories

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